古いフレームのガラスが少女の首のところで割れています。その部分に割れ目から入り込んだ埃が、写真の幼子に秘密めいた影を落とします。人が意図したわけでもなく、ただ偶然が創り上げた極めてドラマティックな作品です。
さらに長い時の流れによって写真はひび割れ、ガラスには汚れが模様を描き、ブロンズのフレームは表裏に複雑な景色が浮かび上がっています。
忘れ去られ、いずれは朽ち果てる終焉の時を待つ、その途上にあって写真の女の子はいつまでもあどけない表情でこちらを見ているのです。
さて、あなたはこのフレームに何を想うのでしょう。古いものと今を生きる人とが出会い、同じひと時を過ごす、不思議な縁に導かれた邂逅をどうぞお楽しみください。

弊店では、古いものの風合いや雰囲気を損なわないために、通常、本格的な洗浄は行いませんが、指紋を拭き取ったり目立つ埃を落としてのお届けはしております。しかし、このお品物については、この姿そのものが作品であるとの考えから、そういう汚れ落としも一切せずにお届けします。

19世紀終わりの頃のフランス製です。サイズは約6.5×8.9センチです。
前述の通り割れや傷み、汚れがあります。