ミュンスター「宇宙誌」イタリア
こちらは、16世紀、ルネサンス期のドイツの神学者、地図製作者であるセバスチャン・ミュンスターの「コスモグラフィア(宇宙誌)」の1ページです。
当時、未知の世界への航海者、探検家による新たな発見と古典とが統合され、新たな世界観が生まれようとしていました。そのような中で1544年に初版が出版された彼の著作「宇宙誌」は、地理学だけでなく歴史、文化、伝説などを網羅した世界の百科全書であり、文章だけでなく挿絵も注目を集め、その後、100年以上に渡って各方面に影響を与え続けました。
このページは両面印刷になっており、古いドイツ語でイタリアについて書かれているようです。片面の挿絵は、生後すぐに捨てられた双子ロムルスとレムスで、雌狼ルパに乳を与えられて命を助けられているところです。その後、羊飼いに育てられたふたりは国を建設し、兄のロムルスが王となり、その名にちなんで国は「ローマ」と呼ばれました。ここでは、この紀元前753年、ローマ建国の物語が紹介されているのでしょう。
もう片面の記述ははっきりとは解読できませんでしたが、やはりイタリアにまつわる内容のようで、大変神秘的な挿絵についつい引き込まれてしまいます。
ルネサンス期の人々の目を通してさらに古い伝説の世界を覗き込むという、得難い体験ができそうです。当時の人々の飽くなき好奇心、森羅万象をまとめて新たな世界観を紡ぎたいという情熱が見事に形になった1枚と言えるでしょう。
17世紀、ドイツで刊行された版と推測されます。こういう古い図版は、透明アクリル板で挟む形式のフレームに入れて飾っても、紙質の古さまで楽しめる、ちょっと知的な展示になるかと思います。
サイズは約21.2×34.5センチです。
本から切り離した跡があり、古いものですので傷、汚れがあります。