天文書籍「遥けき世界より」
表紙の布張りの深みのある青、その真ん中の土星と彗星の絵、まず装丁が素敵ですね。この本は一般向けの天文解説書"Aus Fernen Welten"「遥けき世界より」です。巻末に青く彩色した天球図が折り込まれていますが、本文にも白黒の図版が多数入っています。クラシックなイラストや惑星や日食の図版も魅力的ですが、この時代になると写真も多く見られるようになり、1910年のハレー彗星、月面から遥か彼方の星雲まで、古いものだけにかえって神秘的で心躍らせる画像が満載です。
本文はフラクトゥールのドイツ語なのでなかなか読みにくいかも知れませんが、ページをめくるごとに現れる素敵な図版の虜になるのは、書籍ならではの贅沢な楽しみです。
それともうひとつ、この本の出版年は1939年で、序文の最後には「1939年 夏」との記載があります。つまりこの本は、ナチスドイツがポーランドに侵攻を開始した、第2次世界大戦勃発と時を同じくして出版されたのです。まもなく、遥か遠い世界から届くメッセージに胸を踊らせることも、夢を語ることもできなくなる時代になるのですから、もう少し出版が遅れていたら、この本は世に出なかったかも知れません。
そんな時代の流れにも想いを馳せながら、遥けき世界からの最後のメッセージになってしまったとも言えるこの書籍を、どうぞお手元でゆっくりと開いてみてください。
1939年、ベルリンにて出版。サイズは約14.5×22センチ、厚さが約5センチです。
古いものですので、シミ、汚れ、傷みがあります。
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