こちらは、16世紀、ルネサンス期のドイツの神学者、地図製作者であるセバスチャン・ミュンスターの「コスモグラフィア（宇宙誌）」の1ページです。
当時、未知の世界への航海者、探検家による新たな発見と古典とが統合され、新たな世界観が生まれようとしていました。そのような中で1544年に初版が出版された彼の著作「宇宙誌」は、地理学だけでなく歴史、文化、伝説などを網羅した世界の百科全書であり、文章だけでなく挿絵も注目を集め、その後、100年以上に渡って各方面に影響を与え続けました。
このページは両面印刷になっており、一方には古代世界七不思議のひとつバビロンの空中庭園を造ったアッシリアの女王セミラミスが紹介されています。そしてもう一方には、古代ローマで出入り口の守護神とされるヤヌスの挿絵があります。文中に、イタリアを統治した人々はそれぞれに領地を分け与えられたというような記述が見えますので、当地における都市国家発祥の歴史などが綴られれているのではないでしょうか。
どちらにも、巧みな木版に手彩色の見事な挿絵がついており、ルネサンス期の人々の目を通してさらに昔の神話の世界を覗くという、他では得難い魅力に溢れています。当時の人々の飽くなき好奇心、森羅万象をまとめて新たな世界観を紡ぎたいという情熱が見事に形になった1枚と言えるでしょう。

宇宙誌は刊行後、6カ国語に翻訳されております。こちらは17世紀に刊行されたフランス語版と推測されます。こういう古い図版は、透明アクリル板で挟む形式のフレームに入れて飾っても、紙質の古さまで楽しめる、ちょっと知的な展示になるかと思います。
サイズは約20.7×31.1センチです。
本から切り離した跡があり、古いものですので傷、汚れがあります。