月男のブローチ
ヨーロッパでは、月の模様は月に住む男の顔だと言われてきました。何か困ったことがあれば、その月男"The Man in the Moon"に話せば眠っている間に解決してくれるという言い伝えもあるようです。月というのは、村はずれにひっそりと住んでいる魔法使いのような、私たちの身近にいるけれど謎に包まれた存在なのでしょう。そんな月の姿をそのまま形にしたブローチです。
表情豊かに何かを語りかける月男、星や台座の真鍮は、長い時の流れで輝きが削ぎ落とされ、滑らかな肌に深い翳りとしっとりとした艶を留めています。それはまさに古いものだけに宿る表情です。
背景はジェットガラスと呼ばれる漆黒のガラスです。19世紀後半、ヴィクトリア女王は夫が亡くなったのち、10年以上も喪に服し、そのことからイギリスに黒色の喪のジュエリーが広まりました。その素材は本来、植物が化石化したジェットですが、産出量が少なく、その代替品のひとつがこのジェットガラスです。ガラスならではの硬質な黒い艶が、古色を帯びた金属と素晴らしいコントラストを見せています。
死者を悼む黒い闇と古くから語られてきた月男のコラボレーションが、このブローチの中で神秘に満ちた物語を紡いでいます。
19世紀ヴィクトリア朝から20世紀初めの頃までのイギリス製で、サイズは約4.8×5.7センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。