聖テレーズ 胸像
オパールセントガラスで作られた大型の胸像です。オパールセントガラスはぼんやりと青白く、光を浴びるとレモンやアプリコットの遊色を浮かべます。幾重にもうつろうその姿はガラスらしからぬ幻想的な佇まいです。
こちらは聖テレーズで、信仰厚い修道女であった彼女は死の床で「私は天国でこの世の人を助けます。天国から薔薇の雨を降らせましょう。」と語り、24歳の若さで亡くなりました。その死を聞いて多くの人が集まり、テレーズのために祈りました。その中には病人もいましたが、彼女のために祈ることで様々な病が癒えたのです。人々は彼女の薔薇の雨の約束を受け取り、テレーズは異例の早さで聖人に列せられました。現在ではジャンヌ・ダルクとともにフランスの守護聖人であり、特に弱い人々を守る聖人として知られています。
この逸話により聖テレーズは胸に十字架と薔薇を抱く姿で表されることが多いのです。このお品では、光の加減で十字架と薔薇がアプリコットに染まり、また、少し微笑むお顔がレモン色に輝いてとても神々しい表情を見せます。普段の室内では清らかで柔らかな薄水色の佇まいで、いずれの姿もまるで夢の中に出てくるようです。
特にこれだけの大きさになると、その美しさにはまた格別の存在感があります。
1920年代から30年代のアール・デコの時代にフランスで製作されました。売り主の情報によると20世紀初頭からパリにあった美術工芸品店エトランで扱われた品物とのことです。この店の店主はユダヤ人であったため、1940年に閉店し店主は強制収容所で亡くなっています。もし、この店のお品であれば、当時パリ市中にあった工房に発注して造られたものでしょう。
サイズは、台座が約15×9.5センチ、高さが約17センチです。
古いものですので若干の傷、汚れがあります。