花々が咲き乱れる姿が浮き彫りになっています。その見事な木彫が黒く染まっている、この造形と色彩のギャップに深い趣を感じます。
19世紀後半、夫の死から長らく喪に服したヴィクトリア女王に始まり、服喪の装飾品であるモーニングジュエリーがイギリスを中心に広まりました。花かごも漆黒の素材に彫られ、それはメメント・モリという古い警句を人々の心に呼び起こすものでもありました。
この襟留めもそのスタイルを踏襲したものと思われ、細やかな立体感や生命感も豊かな木彫が黒く染められた木に施されている姿は、シックでエレガントな美しさとともに、せめぎ合う光と闇の硬質な空気を纏ってとても素敵です。
この襟留めは "boucle de cape" と申しまして、コートやマント、ケープなどの襟に縫い付けてバックルとして使います。裏面に金属の金具とともにバーが付いておりますので、お手持ちの衣装に縫い付けてお使い下さい。この黒い襟留めの存在感があなたのお召し物を特別な一着にしてくれることでしょう。

19世紀後半のフランス製です。サイズは1点が約2.9×6センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。