ミュンヘンカレンダー「騎士の兜」
騎士の兜のデフォルメされた姿は、それ自体が生命を宿しているようです。施された装飾は自らの意思があるように踊り、尾がいくつにも枝分かれした獅子は何か言いたげにこちらに視線を送っています。一目見ただけで不思議なファンタジーの世界に引き込まれそうな絵ですが、驚いたことにこれは、もともとミュンヘンおよびその周辺地域に実在する紋章なのです。兜の上にある編まれた道具のようなものが、この紋章の家や地域を象徴しているのでしょう。
1880年代に、オットー・ハップという今風に言えばグラフィックデザイナーがミュンヘンでカレンダーを発行しました。そのミュンヘンカレンダーは、毎年、装丁に趣向を凝らし、毎月の暦の横に実在の町や貴族の紋章をデザインしたものを載せたのです。それは大変に人気を博し、第二次世界大戦前のドイツの恐慌で発行できなくなるまで続きました。
それはそれは魅力的なグラフィックスの数々が見られるのですが、何しろ実用された暦ですのでぼろぼろになって崩壊したものが多く、その中からこれはというページを救い出してご紹介することにしました。
彼のデザインは年毎に雰囲気が変わるのですが、この絵では騎士の甲冑という中世を思わせる題材を、美しい色彩とともによりダイナミックに描き、強いインパクトを感じさせます。19世紀の終わりから20世紀初めの、とても興味深いグラフィックデザインの作品と言えるでしょう。
この図版の製作年は不明ですが、カレンダーは1880年代から1930年代前半までほぼ毎年発行されました。ドイツ、ミュンヘン製、リトグラフで、サイズは約16.2×31.7センチです。
前述の通り実際に使われた古い暦ですので、綴じからはずされた跡の他、切れや傷み、汚れがあります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。