毛並みの流れや光の宿る眼差し、躍動感のある肢体、細やかな手彩色まで魅力的で見事な仕上がりの博物画です。博物学とは、自然界に存在する全てを収集し体系化することを目指す学問なわけですが、カラー写真などなかった時代、異国の美しくも珍しい生き物たちをなんとかして伝えたいと願う人々の情熱が伝わってくるようです。
「世界各地の猛獣」と題され、このページにはジャガー、ピューマ、ヒョウ、ヤマネコ、サーバル、オオヤマネコなどが描かれています。よくみると顔つきがネコのように可愛かったり、人のようだったり、どことは言えないがどうも何かが変だったりと不思議な気持ちになりますが、中には絵師が本物を見ずに描いたものもあったのでしょう。その後、博物学は生物学や天文学などに細分化、専門化していくのですが、その過渡期にあって知恵を絞り、また、はち切れんばかりの好奇心に眼を見張ってそれを見た当時の人々の姿が浮かんでくるようです。これも古い博物画を眺めるなんとも言えない楽しみなのでしょう。

19世紀前半までのフランスで製作されたものと思われます。絵の裏は白紙ですが、他にもう1ページ、フランス語とドイツ語で書かれた解説がついています。そちらも古い紙がよい質感です。
サイズは約19.3×23.8センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。