金縁の鼻眼鏡
華奢な金色の鼻あての鼻眼鏡で、その造りから女性用に誂えられたものでしょう。しっとりとした艶のある金色がとても上品で、裏に小さく打たれた刻印ははっきり読めませんが、よい仕上げの金メッキと思われます。
もともと、メガネの原型は鼻眼鏡だったのですが18世紀にはつるのある現在のメガネができました。ところが19世紀になって鼻眼鏡は人気を盛り返し、1880年から1900年ごろには大流行しました。それは、鼻眼鏡が目立たないことと、持ち主のために誂えられた金や銀の細工がとてもおしゃれだったためで、当時のファッション誌でも鼻眼鏡をお勧めしていたのです。当時のカタログを見ると金メッキ以上の品が一段と高価だったことから、こちらのお品も比較的値の張る一品だったのでしょう。皮革に深みのある紫の内張のオリジナルケースを見ても、それが窺えます。
レンズは度の弱いとつレンズですから、細かい字などを読むときにちょっとかけたのかもしれません。「奥様、こちらをご覧ください。」などと書類を差し出された時に、ちょっと脇を向いてさり気なくこのメガネをつければ、その様はとてもエレガントだったことでしょう。1900年ごろ、ヴィクトリア朝が終わりを告げるころに生きた女性の気配を感じられる素敵なお品です。
19世紀の終わりから20世紀の初めのイギリス製です。サイズはレンズを含めた横幅が約10.5センチです。
古いもので、実用されたものですので、さびや汚れ、傷があります。また、ケースの皮革には剥がれた箇所があります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。