博物画「ワニ」
版画に手彩色のワニやトカゲの図版です。彩色による肌ざわりや模様の表現、その表情や生き生きとした造形など、とても魅力的な仕上がりです。
上から「ガンジスワニ」、尻尾に特徴のある「ウイップ・テール」、「オオトカゲ」ですが、どう見てもワニとトカゲの区別がついていませんよね。特にウイップ・テールなど、尻尾のぐるぐるはご愛嬌として、頭はワニ、身体はトカゲの空想上の生き物でしょうか。
こちらは18世紀に出版されたビュフォンの「博物誌」を小型版にして1834年に出されたものの1ページです。あまねく世界の生き物を分類、図解しようとした名著ですが、この挿絵を描いた絵師は生きた現物を見てはいないのでしょう。よくて剥製、あるいは皮、研究者のスケッチ、はたまた現地で見た人のお話しを聞いて、後は庭にいるトカゲを思い出しながら「こんな感じですかね。」ということもあったのかもしれません。動画もカラー写真もない時代のことですから無理もありません。しかし、前述のように、それをこのように生き生きと描き切った図版は、その時代だけのユニークな存在であり、見ていて見飽きることがありません。
一般向けの博物学書籍の挿絵ですが、知識を啓蒙し画像を共有しようという熱意、一般の人たちの科学に対する強い興味関心が滲む一枚です。科学が専門家から一般の人の手に渡り始めた黎明期、当時の博物画から時代の雰囲気を感じるのも楽しみのひとつなのかもしれません。
19世紀のフランスで製作されました。サイズは約13.5×21.5センチです。
古いものですので皺やシミ、傷みや汚れがありますが、画像は十分にお楽しみいただけます。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。