長らく使い込まれた風合いの、柔らかい皮の小銭入れです。磨耗によって中の金色がのぞいている留め金も、時の流れだけが作り出す古びた質感をまとっています。
実は、この小銭入れの中には同じようなデザインのさらに小さい小銭入れが入っており、それは取り出すことができます。その中には、こちらは取り出すことはできませんが、さらに小さい小銭入れがセットされているのです。一番小さいものは100円玉が何枚かすっぽり入るくらいの大きさになりますが、つまり、入れ子細工の小銭入れというわけです。畳んだお札、硬貨と分ければ便利と言えなくもありませんが、それよりもこのアイデアとデザインがなんとも可愛くて面白いですね。
もうひとつ、この小銭入れの中に一枚の古い紙幣らしきものが入っていました。これは、チュール・ウッセル商工会議所が発行した50サンチームの金券のようで、フランス銀行チュール支店で換金できると書いてあります。ただし、期限が1926年一杯のようで、かつての持ち主が入れたまま忘れてしまったのでしょう。
しかし、この小銭入れはイギリスで買い付けましたが、以前はフランスにあったのでしょうか。それとも持ち主がフランスに一時滞在したおりに手に入れ、換金しないままになったものかもしれません。
奇抜ですが魅力的なデザインとともに、過去の謎を秘めたちょっと不思議な小銭入れです。

1920年代前半までのイギリス製と推定されます。サイズは一番外側が約9×8センチ、中のものが約5×5.5センチです。
古いものですので傷みや汚れがありますが、留め金は機能しています。