銅版画「ヘルクラネウムの人」
素晴らしく細やかな銅版に手彩色の図版です。棍棒と人の首を持つ謎めいた図版ですが、その謎解きをしてまいりましょう。
ヘルクラネウムは現在のイタリアにある古代ローマの町で、約2000年前に起こったヴェスヴィオ火山の噴火でポンペイとともにあっという間に埋められてしまいました。ポンペイより規模は小さいのですが、より高い文化を持つ裕福な人々が住み、かのヘラクレスによって建設されたという伝説からヘルクラネウムと呼ばれました。
そこで、この町の人はヘラクレスの武器である棍棒と、彼の妻を襲おうとしたためヘラクレスが毒矢で倒したケンタウロスのネッソスの首を持った姿で描かれているのです。つまり豊かな文化を享受するヘラクレスの末裔であることを象徴的に表現したものが、この銅版画というわけです。
以上の謎解きも興味深いのですが、人の表情、衣服、立っている台座の彫刻、戯れる動物たちに至るまで、実に精緻で豊かな雰囲気の仕上がりが見事です。
1780年、フランス、パリで製作されたものですが、元は世界の地理や歴史を紹介する書籍の挿絵だったものと思われます。ヘルクラネウムの遺跡は1700年代の初頭に発見され、この時、発掘が始まっていましたので、この銅版画製作当時にはヘルクラネウムに言及する書籍もあったのでしょう。
サイズは約18×26センチです。古いものですのでシミや傷、汚れがありますが、図版は十分お楽しみいただけます。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。