ミラスコープ
こちら"mirroscope"と申します。「ミラスコープ」と発音するのでしょう。鈍い艶を残す黒い金属の躯体、大きなレンズ筒を構えたフォルムは、まさに過去から来た未来の姿です。
この機械にポストカードや紙にプリントされた写真をセットします。部屋を暗くしてスイッチオンすれば、暗闇に吊るされたスクリーンにその色彩もそのままに拡大画像が浮かび上がるという、世にも不思議な装置です。21世紀を生きる皆さんには何の驚きもないでしょうが、これが100年以上前に製作されたとお聞きになれば当時の人々の気持ちも想像していただけると思います。
ガラススライドなど光を透すものを使った幻灯機はもっと以前、19世紀からありました。しかし、これはカードなど不透明なものを投影する、文字通りマジックランタンなのです。実は、紙に印刷された図版も、強い光を当てればその10%程度を反射します。このミラスコープは、それをレンズで集めて映し出すというわけです。
テレビさえ夢のまた夢という時代、当時の人々の「イメージを今、ここで共有したい」という飽くなき想いが形になったようなレトロフューチャーの一台です。
1910年代、アメリカ、オハイオ州クリーブランドのBuckeye Stereopticon Co.で製作されました。当時のテイストをできる限り損なわないようにしながら、現代の日本の電源で実際に使用できるように修復してあります。このスコープと同時代に流行した、写真館の三日月の上で撮影するペーパームーンの写真をおつけしますので、部屋をできるだけ暗くして、投影された像を見ながらカードのセット位置、スクリーンまでの距離や角度を調整してください。このアナログなひと手間も、過去から来た未来のお楽しみです。
サイズは、横と縦の最大が約24.8×29センチ、高さが約19.5センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。