ステレオグラム「無垢な夢」
すやすやと眠る幼子のステレオグラムですが、よく見ると上の方に透けた人の姿が浮かび、その顔には何やらこの世のものならぬ表情が浮かんでいます。題して「天使たちの無垢な夢」です。
キリスト教に帰依した人たちであれば守護天使を描くのでしょうが、1902年に撮影されたこちらはどうでしょう。19世紀の終わりは、ロンドンの切り裂きジャックなど残酷な死もずっと身近にあり、人々の心には霊魂を求める気持ちが潜んでいたのかもしれません。この時期、心霊現象を信じ、探求する心霊主義も盛り上がりを見せていました。それにしても「無垢な夢」とは、人生への戒めなのか皮肉なのか、なんとも意味深な題のつけ方ですね。
ステレオグラムはアナログ時代の3D写真です。2枚の写真を同時に見て近づけたり遠ざけたりすると、その人の適切な距離で画像がひとつになり立体に浮かび上がって見えるのです。当時、販売されたステレオヴューワーという器具を使うと、より簡単に立体画像を見ることができました。この時代は心霊写真も多く出回りましたが、ステレオグラムとなると、その画像は何倍もリアルに迫ってくることになったのです。
シャーロックホームズの作者、コナン・ドイルも、やがて勃発した第一次世界大戦で息子を失ってからは心霊主義にのめり込み、その無理な活動のために寿命を縮めたとも言われています。世紀末から新しい世紀へと続く不条理な時代に想いを馳せながらこのステレオグラムを改めて眺めると、そこに当時の人々の大きく揺れ動く世界観が透けて見えるように思われます。
20世紀初頭、アメリカ合衆国で製作されました。サイズは約17.8×9センチです。
古いものですので反りや傷、汚れがあります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。