幽霊のステレオグラム
19世紀はもちろん20世紀になっても、イギリスやアメリカの人たちは幽霊が大好きだったようです。イギリスでは幽霊が出るという噂があると、その不動産の値段が上がるとまで言われていたそうです。
そこで登場したのがこのステレオグラム、その名も「漂う幽霊」です。これは頭巾をかぶった老婆でしょうか。恨めしげな表情でぼうっと姿を現したものですから、気を失う人や白眼を剥く人続出の大騒動がこちらです。
ステレオグラムとは立体写真で、2枚の写真を同時に見ながら近づけたり遠ざけたりしていると、その人に合った距離で画像がひとつになり、立体的に浮かび上がってきます。当時、販売されていたステレオヴューワーという器具を使うともっと簡単に立体画像が見えるという、アナログ時代の3D写真だったのです。19世紀の終わり、写真技術の進歩とともにいわゆる心霊写真も世に出回りましたが、何しろこちらは立体ですから、その迫力も段違いというわけです。
世紀末のこの時代は今より死がずっと身近にあり、やがては世界大戦が起こるという時代背景も重なって、単なるエンターテイメントとしてだけでなく心霊を求める心が当時の人々にはあったのでしょう。また、ディケンズのクリスマスキャロルにも描かれるような戒めの精霊と捉える気持ちもあったのかもしれません。そう考えて改めてこのステレオグラムを眺めると、時代の光と闇の狭間から生まれた一枚がより興味深く見えてくることでしょう。
20世紀初めの頃までのイギリスあるいはアメリカ合衆国製と思われます。
サイズは約17.5×8.7センチです。
古いものですので反りや傷み、汚れがあります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。