緑のガラスのメカニカルペンシル
手の込んだ細工の銀色のメカニカルペンシルです。堂々としたヘッドには深い緑色のペーストガラスと浮き彫りの装飾が施され、本体に刻まれた模様も細やかです。通常は小振りで上品なシルバーのスティックのようですが、このお品にはチェーンや紐をつける環がついておりますので、それを利用してペンダントのように下げることもできます。中央付近のリングをスライドさせると芯のついた筆記部分が出てくる仕組みです。長い時を経て銀色の肌に穏やかな輝きを残している、この落ち着いた使用感も素敵ですね。
19世紀末、ヴィクトリア朝の終わりの頃、備忘としてちょっと書き留めておきたい時などにさっと使える筆記用具はとても便利で、しかもそれがこのようなペンシルだったら、とてもおしゃれなアイテムだったことでしょう。
シャーロック・ホームズもシャツの袖に何事か書き留め、また「ワトソン、書き留めておいてくれよ。」と声をかければ、彼も慌てて備忘録を取り出すのですが、あの時使った手の中に隠れそうな短い筆記用具はこれだったのかもしれません。あるいは貴婦人が綺麗な手帳とともにこのペンシルを取り出し、走り書きした1頁をぴっと破り、傍の小間使いに「これをあの紳士に渡してちょうだい。人目につかないようにね。」と囁いたのでしょうか。
先端からごく短い芯を入れて、刻みのある本体部分をくるくる回して芯を出し入れします。
ただ、この時代のものに合う太さの芯を探すのはなかなか難しく、私どもは入手できませんでした。大きな文房具店でお探しになるか、若干太いものをサンドペーパーで削ってご使用ください。
1900年頃、ヴィクトリア女王がお亡くなりになる頃までにイギリスで製作されたものと思われます。サイズは筆記部分を収納した状態で長さが約8.2センチ、筆記部分を出した状態で約10.3センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。