古い銅版画をご紹介します。こちらは古代ローマの詩人オウィディウス作の変身譚から、我が子を殺すメディアの場面を描いたものです。メディアはコルキスの王女で魔法に長けた巫女であり、夫が別れを告げると、自分に代わって新妻となる王女、その父であるコリント王を焼き殺し、夫との間に生まれたふたりの子供の命も奪って去って行くのです。人が獣に姿を変える物語として変身譚に取り上げられ、ギリシャ悲劇の題材ともなっています。
燃える王宮、助けを求める王、我が子を手にした魔女メディアが真に迫って描かれています。遠くを走る上半身が白鳥、下半身が人間の姿はいったい誰でしょう。今から300年以上前の銅版画ですが、人の内に潜む想像を超える心情や翻弄される不可知な運命が、神との領域も曖昧なままに描かれているようです。

1702年にパリで出版された変身譚からの図版です。
サイズは、フレームの外寸が約43.5×53.5センチです。撮影は反射を防ぐために透明アクリル板を外して行っておりますが、発送時にはアクリル板をはめてお届けします。
これまで多くのイベントで展示しておりますので、額縁およびアクリル板に傷、汚れがあります。図版も古いものですので端の切れや傷み、シミや汚れがありますが図像は十分お楽しみいただけます。