美しい水色の色彩、図像の優しいタッチと巧みな配置、そのどれもが魅力的な天文図版です。
水色を基調とした宇宙に黄みを帯びた太陽が輝き、地球と月に青みを帯びた影を落とす。天文図版としては珍しく、幻想的とも感じられる色彩に、まず目を奪われます。また、太陽が放つ光線の表現は光の粒が感じられるように柔らかく、地球や月のどこかぼんやりと陰影をまとう姿には不思議な立体感があります。
一枚の中に昼夜、四季、引力による潮の干満など、地球に対する太陽と月の影響がわかりやすく図示されており、これを見れば、なぜ新月の時に大潮を迎えるのかも一目瞭然です。
一般向けの天文書として優れているだけでなく、輝く太陽の周りを12ヶ月の楕円を描いて旅する地球の意匠を見ていると、当時の人々の宇宙への憧れと畏敬の念が滲んでくるようです。

図版の製作はイギリスのエジンバラで、出典は、W & A K Johnston, Ltd, から1903年に出版された "The Twentieth Century Atlas of Popular Astronomy" で、著者は Thomas Heath, BA です。

写真は反射防止の為、アクリル板を抜いて撮影しました。実際には木製額にアクリル板が入ります。額のサイズは大衣版、外寸約52.5×41センチです。
額はイベントなどでの展示に何度も使用しましたので、傷、汚れがあります。また、図版も古いものですので傷、汚れがありますが、色彩、図像は十分に楽しんでいただけます。