直角定規とコンパスが彫り込まれた銀色のナプキンリングです。この直角定規とコンパスの図象はまさにフリーメイソンの紋章であり、メイソンたちが掲げる「兄弟愛、慰安、真理」という基本理念を表しています。この「慰安」は「慈善」と言い換えてもよいでしょう。300年ほど前のイングランド、スコットランドの石工だった方の墓石に見られ、その後、250年ほど前からこの意匠に統一されてフリーメイソンに定着していきました。
銀メッキのリングは厚みと重量感があり、長い年月を経て、所々、黒みを帯びた質感が深みと落ち着いた趣を感じさせます。図象に彫られた数字はロッジの番号でしょう。フリーメイソンといえばそれぞれのロッジで行われる門外不出の秘密の儀式が有名ですが、その儀式の後に催される宴会も大切な行事でした。こちらのナプキンリングはその宴会のための作られたものかもしれません。あるいは、一対でオリジナルの箱に入っていますので、メンバーが特に誂えた可能性もあります。
何れにしても、フリーメイソンの文化的伝統とまで言われた会食を楽しむメンバーたちがテーブルに集う姿が目に浮かぶようです。

1940年まで、アール・デコの頃のイギリス製です。サイズは直径が約4.2センチ、リングの幅が約2.5センチです。前述の通り箱はオリジナルです。
古いものですので、本体、箱ともに傷、汚れがあります。