時計パーツのブローチ「不思議の森」
見ていると吸い込まれてしまいそうな、とても細かく優雅な金線細工のブローチです。うねる植物が絡まり、花が咲いているようにも、鳥が隠れているようにも見える、不思議な森の風景でしょうか。
素晴らしい造形の細やかな仕上がりですが、どうやらこれは18世紀の後半から19世紀の懐中時計に使われていたパーツだったようなのです。と言っても外からは見えません。こんなにかっこいいのだから文字盤に使えばと思うのですが、そうではなく、さらに裏をひっくり返しても見ることはできないのです。裏蓋を開けると、時刻を補正するための文字盤などとともにこれが置かれています。私も懐中時計の知識に乏しく、何のためにあるのか、正式名称さえよくわからないのですが、こんな奥深くにひっそりとあるパーツをなぜこんなにも凝った意匠にしたのか、謎は深まるばかりです。見えないところにこそこだわるという伊達者、ダンディズムの証なのでしょうか。ともかく、その秘められた美学が形を成したような古いパーツをブローチに加工したものと思われるのです。
うねるツタ模様の曲線の組み合わせの中に、様々なものを連想させる造形が散りばめられています。当時の時計職人が自由な想像の世界を密かに忍ばせたのでしょうか。それにしても見事な仕上がりからは、凛と引き締まった気品と優雅さを感じさせます。
時計パーツそのものは19世紀の前半、ヴィクトリア朝初期のイギリスで製作され、ブローチに仕立てられたのは1930年代まで、アール・デコの時代のイギリスと推測されます。
サイズは直径が約2.3センチです。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。