ペーパームーンのステレオグラム
三日月に乗った子どものステレオグラムです。ローブの端を握って真剣な眼差しのこの子は果たして何の役を演じているのでしょう。星の妖精でしょうか。思わず聞いてみたくなりますね。写真には"Starlight"「星明かり」と題名が添えられています。
19世紀末から20世紀の初めにかけてのアメリカでは、三日月のセットで写真撮影することが流行りました。ただの紙のお月様なのですが、ものすごくロマンティックで、今で言う「映える」写真だったのでしょう。もちろん、誰でもが手軽に撮影できる時代ではないので、みんな写真館に行き、然るべき衣装を着てセットの中で撮りました。というわけで、この子の力のこもった大真面目な姿も頷けますね。
そして1933年、この流行の最後を飾る曲 "It's Only a Paper Moon" がヒットするのです。
「ぶっちゃけ、ダンボールの海に浮かぶただの紙のお月様さ。でも、もし君が僕を信じてくれたら、それは作りものなんかじゃなくなるんだ。」
明るく、力強く、夢があふれる当時の人々のロマンティクな気分が、今の私たちも力づけてくれます。
ところで、こちらは同じような写真が横に並んだステレオグラムです。この二枚の写真を両目で同時に見ながら離したり近づけたりしていると、ある時、写真がひとつになり立体的に像を結びます。ステレオヴューワーという器具に装着するともっと簡単に立体像が見られるという、一種の立体写真なのです。
科学の進歩で夢物語が現実になり始めたその黎明期、レトロフューチャーのかけらのようなステレオグラムが時代のロマンティックな雰囲気を乗せて現代にやって来ました。どうぞその姿をお手元でご覧ください。
19世紀末のアメリカ合衆国製で、サイズは約17.7×8.8センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。