ステレオビューワー
19世紀にはもちろんデジタル技術はなく、電気で灯りがついたのすら世紀の終わり頃のことです。しかし、19世紀はアナログで何でもやるという時代だったのでしょう。
こちらは立体画像、すなわち3D画像を見ることのできる器具で、ステレオヴューワーと申します。画像でお示ししたように、同じような写真が横に並んでいるステレオグラムというものをセットして覗きます。人によって適切な距離が違うので、覗きながら遠近を調節してやると、あら不思議。ふたつの写真がひとつになって立体になるのです。何しろ映画もテレビもない時代ですから、見た人はさぞ驚いたことでしょうね。
緑に彩色された革、少しだけ艶を残した木材がずいぶん古色をまとった現在でもとてもよい質感と雰囲気で、博物趣味のオブジェとしても素敵です。とても丁寧に作られたことをうかがわせますし、当時の人々がこの器具を取り囲んで、わくわくしながら見ている光景が目に浮かぶようです。
人間の目が立体視できる理由は19世紀の初めにはわかっていましたが、残念ながら写真がありませんでした。その後、写真の技術が発達すると、人の目と同じように二台の写真機を並べてステレオグラムを撮影したのです。ステレオグラムだけでも練習すると立体像を見ることができるのですが、それをもっと簡単に見るための道具がこのステレオヴューワーだったのです。
新しい技術が次々に生まれた現在ではもはや忘れ去られた道具ではありますが、遠い過去の記憶の霧の中にぼんやり浮かぶレトロモダンな姿には何とも言えない魅力があります。
画像で装着しているステレオグラムは別売りですが、他のステレオグラムを一点付けさせていただきます。
19世紀後半、アメリカ合衆国、アメリカンレンズ社製です。サイズは、最大が約18×32センチ、高さの最大が約30センチです。
古いものですので傷みやぐらつき、汚れがあります。