青いベルベットに金色の糸とモールを使った刺繍と星々が飾られた帽子です。こちらはフリーメイソンのセレモニー用のもので、実際に使われた形跡があります。
金色の糸は金属でしょうか。華やかな中にも力強い線を描き、布地の黒みを帯びた青と相まってどこか高貴な威厳を感じさせます。
帽子の周囲を取り巻くように幾つも置かれた五芒星は、スパンコールやモールを組み合わせて、その輝きを放つ姿を表現しています。フリーメイソンにおける五芒星は、元々は護符を象徴する図象です。従って、儀式やパレードにお守りを身につけ、光り輝くそれを高らかに掲げて参加するというイメージなのでしょう。その後、五芒星はフリーメイソンの上位位階で、友愛、叡智、健康、美徳、恩寵、完全無欠、聖性などのよい概念と結び付けられるようになりましたので、高い位階にあるメイソンがそのような象徴を表現するために誂えたものという可能性もあります。
実は、フリーメイソンは公共の建築物が建築を始める際に定礎式という儀式を請け負うことがあり、また聖ヨハネなどの聖人の祝祭日にメンバー全員が正装して教会まで行進するなど屋外で公式の活動を行うことがあります。その際に、それに相応しい位階の人がこの帽子を着用したのではないでしょうか。
こちらは、アメリカで買い付けましたので、アメリカ合衆国のどこかのロッジのメンバーのものだったと思われます。
何れにしても、神秘と象徴が形になったようなこの帽子を眺めながら、時空を超えた歴史と伝承を巡る旅に出てはいかがでしょうか。

20世紀の初めの頃までのアメリカ製です。サイズは全体の直径が最大で約22センチ、高さの最大が約12センチ、頭を入れる開口部が約17×18.5センチと楕円形です。
古いものですので布や装飾のモールなどに擦れや欠けがあり、全体にへこみ、傷、汚れがあります。