少女の古いビスクドールです。この全身の傷やひびは弊店に来た当時からのものです。
かつて、実店舗を開いていた時は、店の奥でディスプレイに紛れて立っていました。薄暗い弊店の雰囲気に馴染んで、もはや空気の一部となっていたものですが、数年前に店舗を閉めてからは、誰からも顧みられないままになっていました。相変わらず眼を開いて立ち続ける彼女があまりにも不憫に思えて、遅ればせながらどなたかの元に旅立たせることにいたしました。
彼女は暗い奥深く、眠らずにひたすら立ち上がったまま待ち続けていました。久方ぶりに手に取られた彼女はようやく目を閉じ、安心した瞬きを繰り返しました。そして彼女は目を閉じ一晩眠る事が出来ました。目を閉じた彼女が次に想い浮かべるのは、新たな持ち主との邂逅です。時が経ち儚く花のように崩れゆく自分の身を彼女は感じながら、望み続けた温かな人間の手が差し伸べられるその時を今か今かと待っています。
このひび割れや、朽ち具合を受け入れて大切にしてくださるような、彼女の友人や家族になってくださるお客様がお迎え頂けたら幸いです。

スリーピングドールで、ヘッド、手の先の部分は木の粉などを固めたものでもので出来ているようです。それ以外は布製で、中に藁が詰められています。手足の付け根は前後に動きます。
フランス製で製造年の詳細ははっきりしませんが、アンティークだと思われます。サイズは身長が約36センチです。
前述のようにひびや塗装の剥げ、汚れがありますが、すぐに崩壊してしまう状態ではありません。