古い宝石箱の魅力は繊維を見せるシルク、古色が降り積もった金属や分厚いガラスの朽ちて退廃的な佇まいにあります。こちらのお品は、それになんと幼子イエスと洗礼者ヨハネのイメージを封じ込めているのです。しかし、そのモノトーンの画像にもどこから入ったのか細かい砂のようなものがこびりつき、その様はまさに、長らく放置された礼拝堂を曇ったガラス越しに覗き込むと、半ば崩れ落ちた天井の隙間から差し込む光の中に浮かび上がる像の姿です。
この宝石箱を見ていると、いつしか、遠い昔に豊かだった一族の土地に打ち捨てられた礼拝堂の前に立っているような気持ちになります。
かつての繁栄は失われ、聖なるものは忘れ去られました。しかし長い時の流れの中、幼子は未だ十字架の周りで手を取り合っています。この古い宝石箱をお手元に置いて、あなたの心には何が生まれるのでしょう。

20世紀初めの頃までのフランス製です。サイズは約6センチ四方の正方形で、高さが約7.5センチです。
古いものですので汚れや傷みがありますが、蓋はきちんと開閉できます。