シルバーが時の流れとともに黒みを帯び、陰影を深めた姿からは、そこはかとない威厳と神秘的な雰囲気が漂います。小さな粒と曲線を巧みに組み合わせたちょっと謎めいた意匠が、素材の質感と本当によく合っていて、これはまさに長い時間だけが創り出す古いものならではの美しさと言えましょう。
そこに置かれたライラック色のアメジストは、無彩色の世界に点る生命の灯りのようで、いぶし銀と見事に融合して素晴らしい反応を起こしています。

『四月はとても残酷な月で、生命の果てた土地でライラックを育て、記憶と欲望をないまぜにして、未だぼんやりとしている根を春の雨で揺り起こすのです。』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（T.S.エリオット「荒地」冒頭　翻訳は私）

エレガントでいながらどこか神秘的な佇まい。見ていると謎はどんどん深まり、困惑と愛着の狭間で心が揺れてしまうような。そんな美しい緊張をはらんだお品を、どうぞ見に着けてお楽しみください。

20世紀前半までのイギリス製です。
銀の素材は純度が92.5%以上のスターリングシルバーで、サイズは約1.4×3センチです。
アメジストについては買い付け時の情報により、その後、正式な鑑定はしておりません。
古いものですので傷、汚れがあります。