すずらんのボンボニエール
瑞々しい緑の煌めきが古寂びた金を纏い、そこに幻のようなすずらんが浮かび上がる、美しい夢を見ているような景色のボンボニエールです。エナメルを盛り上げた手描きの中でもこちらは特筆すべき高さに盛り上げ、そこに見られる花の繊細な表現、巧みなグラデーションの彩色は、本当に彫物のようです。
すずらんも背後の金色の装飾も長い時の流れに程よく光沢を削がれ、角の取れた滑らかな質感を纏う寂びた姿は、まるで古い古い寺院の木彫の趣です。
そして、各所にさりげなく施された点と曲線の装飾が優しく柔らかなリズムを刻みます。
そんな表面の見事な装飾に目を奪われてしまいますが、緑のガラスも透明感があり、光を含んで瑞々しく、光を浴びて背後に引く緑の影も美しい、素晴らしいものです。このガラスの美しさも決して忘れてはならないでしょう。
『絶望に打ちひしがれて眠れなかった私も、心身の疲労に負けていつか眠りに落ちていた。遠くに聞こえる優しい太鼓の音に誘われて、深い霧の立ち込める若草の中を進むと、すずらんが咲く原に出た。小さく流れる柔らかな音楽を聴き、ぼんやりとした光に包まれるすずらんをただ呆然と眺めているところで目が覚めた。美しい夢の記憶と少しだけ暖かくなった心と、頭には「慈愛」という一言が残っていた。私はその言葉を長らく忘れていた。』(ただの作り話 その7)
20世紀初頭までのチェコ製で、確認はできませんがモーゼル社製と思われます。
サイズは直径が最大約12センチ、高さが約7センチです。
古いものですのでエナメルの装飾やガラス、金属部分に擦れや傷、汚れがあります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。