蜂蜜酒の義眼
蜂蜜酒は1万4000年前に飲まれた最古の酒で、人類に渇きを癒す水とは違う酔いをもたらし、それは自然から文化への移行であるとも言われています。
こちらの義眼は、外縁にほんのりとした靄が立つ中に薄めの茶色のリングが生まれ出で、その内側には美しい金茶の地に焦げ茶や白の筋が踊っています。農耕以前の原始の営みの中に芽生えたやがて祝祭や神話へと連なる微かな兆し、そして瑞々しい光の塊の中で、降り注ぐ日差しに照り映える豊穣の色彩は深く深く続き、その上に浮かんでいる黒目はほんのりと紫がかっています。これは、やがて生まれる葡萄酒を暗示しているのでしょうか。
気の遠くなるような太古の昔に生まれ、現代に続く、どこまでも豊かで暖かい人の心を光溢れる色彩で表現したような、持つと温かみを感じ、水滴が滴るようなお品です。
お酒を嗜む方も、お飲みにならない方も、ふんわりと地面から5ミリだけ宙に浮く酔い心地をお楽しみください。
もうひとつ、直射日光で目を傷めないように注意しながら、底から光を当てて見ると、麦わらの間から光が溢れてくるような景色がご覧になれます。
こちらのガラス義眼はドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの "Theodor Müller-Hipper" の手によるもので、その商標にはチューリンゲン州の「最高品質認定」の記載があります。ラウシャは古くから優れたガラス工芸の町でしたが、19世紀にイタリアから義眼製作の技術が伝わり、19世紀の末までにはガラス義眼で有名になりました。今でもその技術を使って、カスタムのドールアイなどを製作しているそうです。
売り主によれば、両親が営んでいた眼鏡店に由来するものだそうで、少なくとも1945年以前の製作とのことですが、実際にはもう少し古いものと思われます。
画像の黒い箱の1辺が約3.7センチです。お品物のサイズの参考にしてください。