19世紀中頃、ニューヨークで出版された学生向けの天文学の本です。この本は納められている図版が本当に素晴らしいです。この時代にはもはや古い技術として廃れてしまっていた木版を採用して図版を印刷しているのですが、この特徴は何と言っても黒ベタがしっかりと出ることです。さらに、細い線も精緻に彫り上げ、12宮の星座や星雲、惑星の陰の部分まで見事に表現しています。序文の前には、遥か遠くまで続くような漆黒の闇を背景に6インチ望遠鏡がそそり立ち、それから木版画ならではの深い黒と白の天空の世界が次々と図解されていきます。
また、同時に惑星の動きを示す図などのデザインも今の眼で見ると大変素敵で、思わず目を奪われます。
デジタルも何もなかった時代に、天文学者が望遠鏡を覗いてスケッチし、彫り師が彫って刷り上げた、そのような図版が18枚納められています。今宵、あなたもこの本とともに、カラー写真とは違う光と闇の世界に出かけて見てはいかがでしょうか。

1850年、ニューヨークで出版されました。サイズは約11×16.5センチ、厚さは約2.2センチです。
古いものですので内外ともに傷みや汚れがあり、実際に学生が使ったようで、所々、図版に彩色した箇所があります。