聖母マリアが姿を表す奇跡はこの2000年の間にもそうあるものではありません。今から150年ほど前、パリのずっと南、スペインもほど近いルルドで地元の少女ベルナデッタの前にお姿を表されたのもそのひとつでした。キリスト教会の厳しい調査の末、聖母出現の奇跡と認められると、当地は大切な巡礼の地となりました。
こちらのホーリーカードはルルドの洞窟でベルナデッタの前に立つマリア様を描いています。その姿はベルナデッタの証言通り、白いベールに青い帯を巻いた姿です。クロモリトグラフの図版を巧みに切り抜いた一種の切り絵は、当時の職人によるものでしょう。周囲に貼られた押し花は、今は周囲に剥がれた跡もありますが、実際にルルドに咲いていた植物です。誰でも巡礼に行くことができたわけではない当時、これも貴重な聖遺物だったのでしょう。
合わせたメダイは、ひとつはマリア様の横顔を、裏面には彼女を象徴するモノグラムと百合、薔薇の花を浮き彫りにしたものです。神々しく表情豊かな横顔、モノグラムや花々の精緻な表現が見事で、聖母を讃える心が伝わってきます。もうひとつは、まさにルルドにおける聖母出現を記念したもので、こちらも細かい造りになっています。
これらは皆、昔から大切にされた聖母巡礼の旅に臨んだ当時の人々を偲ぶ、美しい思い出の品と言えるでしょう。

ホーリーカードは19世紀の後半から20世紀初頭の製作、メダイは同時代かもう少し後のものと思われます。
サイズはカードが約6×10センチ、メダイはマリア様の横顔が直径約2.9センチ、ルルドの記念が約1.7×2センチです。チェーンは現行品で、長さが約44センチです。
全て古いものですので、傷みや汚れがあります。