ニオイスミレの義眼
乳白にほんのり薄いスミレ色が筋を引いています。それは春の朝、靄の向こうにぼんやりと見える花弁のようです。その色は乳白にもほんの少し溶けているようで、虹彩の全体からも僅かにスミレ色が感じられます。佇まいは控えめですが、渦を巻く靄に立ち込めているスミレの香りさえ漂ってくるようです。外側の環も細く一筋、美しいスミレ色です。
黒目の下からは黒みを帯びた黄、あるいは茶色とも思える微妙な色彩が滲み出し、黒目はその上に浮かんでいます。光を含んで瑞々しい生命を感じさせるこの色は、ニオイスミレの中心にもポツンとありますね。
ニオイスミレはその控えめな姿からマリア様を象徴する花で、葬儀の際に墓石に撒く花でもありました。湧き出す靄に包まれて花弁がぼうっと見えているというこの花に相応しい表現は、この十分に光を含む透き通ったガラスの塊だからこそ可能になると言ってよいでしょう。
20世紀初めの頃までのドイツ製です。画像の黒い箱の1辺が約3.7センチですので、お品物のサイズの参考にしてください。
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