手彩色版画「鳩と貴婦人」
精緻な版画に改めて生命を吹き込むかのような手彩色を施した美しいポートレイトです。こちらは18世紀から19世紀前半にかけて活躍したイギリスの版画家でイラストレーターのチャールズ・ヒースによる "Heath's Book of Beauty"からの一枚です。彼は、上流階級の女性たちの肖像画を集めたこの本を1832年に出版し、たちまちベストセラーとなりました。
こちらは "The Carrier Pigeon"「鳩をもつ人」とだけで、この女性の名前はわかりませんが、描かれたのはヴィクトリア朝の前のジョージ朝末期、お出かけやお客様をお迎えする際のアフタヌーンドレスを着た上流階級の女性と思われます。鳩を手に乗せて憂いを湛えた表情、どこか夢心地の眼差し、その力なく垂れた指先から少しエキゾチックなドレスの薄い布の表現、そっと置かれたリュート、花瓶の花まで、すべてがこの女性の人生、秘められた心のうち、これまで、そしてこれから起こる事ごとを雄弁に語るような物語性のある絵です。カラー写真など想像もできなかった時代の素晴らしい技術が、むしろ写真よりも生き生きと絵に命を吹き込んでいます。
1834年、ロンドンにて出版。サイズは、絵の部分が約9×12センチ、ページ全体が約12.3×19.5センチです。
古いものですのでシミや汚れ、傷がありますが、絵の部分に大きな損傷はありません。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。