錬金術の炎の義眼
透き通るガラスの世界に光を含んだ半透明の色彩を重層的に置いていく。そんな素晴らしい表現の義眼です。
浮いている黒目から黒みを帯びたオレンジの炎が吹き出し、渦を巻いています。周囲の闇は炎に照らされて漆黒が薄れて薄墨のような、あるいはほんのわずかに紫が混ざり藤鼠色と言ってよいかもしれません。炎のオレンジに薄い藤色が滲んでいる様は、背後の闇が半透明の炎に透けているかのように見えます。
渦巻く怪しい炎は、薄暗い工房で金の精錬を試みる錬金術の炉を思わせます。錬金術で卑金属が金に変わる刹那、炎の中に精霊サラマンダーが踊るのだそうです。サラマンダーは一般的にトカゲのような姿とされていますが、ルネサンスの化学者で錬金術師のパラケルススは、サラマンダーは女性の姿をしていると言いました。さて、皆さんにも炎の中にサラマンダーが見えますでしょうか。
神秘的な炎と闇の義眼をどうぞお手元でご覧ください。
こちらのガラス義眼はドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの "Theodor Müller-Hipper" の手によるもので、その商標にはチューリンゲン州の「最高品質認定」の記載があります。ラウシャは古くから優れたガラス工芸の町でしたが、19世紀にイタリアから義眼製作の技術が伝わり、19世紀の末までにはガラス義眼で有名になりました。今でもその技術を使って、カスタムのドールアイなどを製作しているそうです。
売り主によれば、両親が営んでいた眼鏡店に由来するものだそうで、少なくとも1945年以前の製作とのことですが、実際にはもう少し古いものと思われます。
画像の黒い箱の1辺が約3.7センチです。お品物のサイズの参考にしてください。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。