深く濃い紫のベルベットがとても美しい祈祷書です。表紙の十字架や留め金も手の込んだ造りになっています。
装丁の金属はどれも艶と古色を帯びたとても味わい深い質感になり、よい状態のベルベット、しっかりと残る小口の金が全て相まって素晴らしい姿となっています。これこそ長い時の流れだけが生み出すことのできる作品と言えましょう。
中の図版は聖母子と洗礼者ヨハネ、もう一人左奥からこちらを見ている星人は誰でしょう。登場人物の表情も豊かに物語性を感じさせる絵が入っています。
また、目次2ページ目の放射状のシミはかつて誰かが花を挟んだ跡のようにも見えます。このような過去の人の気配を感じるのも古いものならではの楽しみですね。

1872年、ドイツ、ケルンでの出版で、装丁も同時代のものと思われます。
装丁の金属枠に若干の歪みが、ベルベットに若干の擦れや傷がある程度で、背表紙の金属の文字もしっかりしており、中も前述のシミなどを除くと時代の割りには大変よい状態です
売り主の家族からの言い伝えによると、もともと修道院にあったものとのことですので、この祈祷書の状態のよさの理由はそのあたりにあるのかもしれません。
サイズは約7×11センチ、厚さが約2.5センチです。