美しい青のベルベット、そして小口には濃い青を背景に金の星を散りばめ、留め金も手の込んだ造りで本当に素晴らしい意匠の祈祷書です。実際の夜空はこのような色ではないのですが、時代の割に大変状態がよく、角度によって光沢を見せる深い青のベルベットを見ていると、心のうちにはるか遠くまで続く夜空を思い浮かべずにはいられません。
この祈祷書には7枚のホーリーカードが挟み込まれておりましたが、その中には1860年代の記載がある手書きの文字、また1885年の日付がある初聖体拝領のカードも見えましたので、19世紀半ば頃には装丁されたものと思われます。中にも表情豊かな銅版画が入っており、そこにも天使に取り巻かれた聖母子や子供を導く守護天使の姿がありますので、当時、そこに星々が煌めく世界は、ただのファンタジーではなく、神や天使の住む聖なる所だったのでしょう。そのようなことを想いながら、このような素敵な装丁を依頼したのはどのような人だったのでしょうか。

こちらの祈祷書はフランス、パリにて出版され、同じくパリのカトリック典礼書専門の製本所で装丁されたようで、付属の箱はその製本所のものです。
古いものですので、書籍、箱ともに切れや擦れ、汚れやしみなどがありますが、どちらも時代の割には大変よい状態です。