聖画の周囲をレース状の透かし細工で飾ったものをカニヴェと申します。修道女などが作り、修道院などで販売して運営の資金にしていたとも言われており、とても精巧で美しい造りには祈りの気持ちも込められていたことでしょう。
こちらは珍しいことに、さらに手が込んでおり、まるで紙芝居のようになっております。その名も「煉獄からの魂の解放」であります。
煉獄とはこの世で罪の償いを十分に終えずに死を迎えた人の魂が、残された償いをする苦しみの世界です。さて、そこから解放されるためには、まずマリア様とともに祈り、善行を行い、懺悔すると、さあ煉獄の門が開きます。するとどうでしょう。軛を逃れ、魂は天国へと解放されるのです。このようなお話が優しく丁寧に絵解きされており、裏には煉獄に関する教義も紹介されています。登場する聖母マリア、天使、人々の表情も生き生きと、細密に描かれた素晴らしい仕上がりになっています。

19世紀から20世紀初頭のフランス製で、サイズは約8×12.3センチです。
古いものですので傷やシミ、汚れがあります。