このブローチは銀と黒の世界に立つ一本の木です。台座のスターリングシルバーは古色による黒みを少々身に帯びて、その陰影を深めています。葉に置かれたカットされたペーストガラスの粒が角度によって煌めきを放ち、まるで凍りついた水滴が陽の光に輝くようです。不思議な光に満ちた無彩色の世界の住人をとても美しく表現しています。
ペーストガラスは宝石に劣らぬ美しさを求めて、その密度、研磨方法を研究した末に考案されたもので、デザインに重きをおいたアール・ヌーヴォーのデザイナーたちによっても多用されました。
こちらのお品は19世紀、ドイツ、マインツで創業したマーティン・メイヤーの工房で製作されたもののようです。裏面に、一部欠けがありますが、星とホイールからこの工房のものと思われる刻印が見えます。

1900年頃、アール・ヌーヴォーの時代のドイツ製と推定されます。
サイズは約1.8×3.5センチで、オリジナルのチェーンの長さが約5.5センチで、セーフティピンがついています。
古いものですので傷、汚れがあります。