マリアンの印章
橙色の印章面に "MARYANN"「マリアン」と彫られています。素材は透明感のある清楚で上品なカーネリアンです。金属の持ち手は、金色が長い年月を経てしっとりとした落ち着きを身につけたと言った風情です。
製作は19世紀、ヴィクトリア朝のイギリス、小振りで、全体にいかにも女性持ちといった造りの印章ですが、さて、100年以上前のマリアン嬢、あるいはマリアン夫人、はたまたマリアン女史の面影を追う時空を超えた旅へと参りましょう。
『なるべく感情を殺して、できる限り事務的に私は夫人に事実を伝えた。私の話を聞き終えた彼女は、全く落ち着きを失わず、年老いてなお背筋の伸びた毅然とした態度で一通の手紙を書き終えた。封筒に入れ、封蝋を垂らすと、夫人は胸元から小さな印章を取り出し封をした。それは彼女がマリアン嬢と呼ばれた頃からの愛用の品だった。「これだけは手元においておけるように計らってくださるかしら。」私にそう言って、彼女は静かに微笑んだ。そこに含まれた微かな悲しみだけが、私が感じとることのできた唯一の感情らしきものだった。』(ただの作り話 5)
サイズは、印章面が約0.9×0.7センチ、持ち手の高さが約1.8センチです。
素材については買い付け時の情報により、その後、正式な鑑定はしておりません。
古いものですので傷、汚れがあります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。