金属のアイリスが一輪、咲いているブローチです。まず、生命を感じさせるうねるような造形に目を奪われますが、その纏う色彩にもこのお品独特のものを感じます。まず花弁の部分はつやを抑えた金色に彩色され、それが長い時の流れで黒みを帯び、一部は擦れて艶光りするという見事な対比を見せています。そして、曲線を描く葉は少し明るい金色で、そこにすっと光の筋が走るかのようです。最後に茎の部分は、もともと彩色されていた形跡もあるのですが、今では黒みを帯びた銀色です。時間が作り上げたこの光と陰、金と銀のコンビネーションは、もはやこのブローチだけのものとなりました。
アイリスの名は、虹を渡って天と地を結ぶ使者、ギリシャ神話の女神イリスにちなんでおり、そこから「メッセージ」「吉報」という花言葉が与えられました。
このブローチの、金属の質感の中に封じ込められた生命を感じさせる少し神秘的な雰囲気をどうぞお楽しみください。

1900年頃、アール・ヌーヴォーの時代のフランス製で、サイズは約2.5×4.9センチです。
古いものですので錆び、傷、汚れがあります。