銀のカップ
小振りな銀のカップ。造形はシンプルで、持ち手にシダの模様などの装飾が、控えめながら丁寧な浮き彫りで施されています。そして "Zum Andenken an Grofsmutter Posner"「祖母ポズナーを偲んで」と、とても流麗な筆記体のドイツ語で彫られていますが、これは特に注文して彫らせたものでしょう。
このカップは今から100年ほど前のドイツで、亡き祖母の想い出に誂えられたものなのです。お孫さんがいくつか作って生前に繋がりのあった人に渡したのか、それとも自分のための忘れ形見に作ったものか、ポズナーというおばあさんとそのお孫さんがどのような方だったのか、今となっては何もかも知るすべもありません。
『祖母が亡くなったという短い手紙は、一読の後、四、五日程は暖炉の上に置かれたままになっていた。所用で出かけた帰途、とある店のガラス越しに銀のカップが目についた。そのカップは私の記憶の中の祖母と同じように飾り気がなくこじんまりとしていた。店に入り、祖母の名を刻むように頼んだのは、微かな感傷と気まぐれのせいだろう。帰宅した私は暖炉の上の手紙にそのカップをそっと置いた。』(ただの作り話 2)
19世紀の終わりから20世紀の初めの頃までのドイツ製。素材は銀の純度が80%以上のシルバー800です。
サイズは、高さが約6.5センチ、口径が約5.7センチです。
古いものですので、小さなへこみ、傷、汚れがあります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。