幻灯機でスクリーンに投影するための木枠付きガラススライドです。こちらは「月面」で半月と三日月が描かれています。ガラススライドも20世紀以降になると天体写真のフィルムを使ったものが現れますが、こちらは手描きで、観測スケッチか撮影したものを模写したと思われます。手描きの天文系スライドはフイルムのものと比べるとはるかに希少価値が高くなります。
本来は拡大して見るものなので、その図版の描写からは製作した職人の極力細かく、そしてリアルにという強い意志が滲み出てくるようです。学術的なスライドなのでしょうが、グレーの線に深緑という色彩の選び方も、2種類の月相の配置も、今の目で見るとその素晴らしいセンスに驚かされます。
暗くした部屋で大写しになったこの月を見たら、きっと夢のようだったことでしょう。自然光の差す窓辺などに置いたら素敵ですね。ご紹介の画像の何枚かもそのようにして撮影しました。

19世紀、ヴィクトリア朝のイギリス製で、サイズは木枠が約20×12.5センチ、円形のガラス部分の直径が約9センチです。
これまでにご紹介したスライドを見るためのライトボックス「幻箱」はサイズが合わないためご使用になれません。
古いものですのでガラス面、木枠ともに傷、汚れがあります。