ガラスの球体に三本足の、今にも歩き出しそうな花瓶です。脚部と球の下半分は透明度の高いクリスタルガラスに浮き彫りの装飾が施され、光線の加減で内部に光を含むような表情を見せます。その上はぼんやりとした青白い色味が見事なグラデーションで少しづつ濃さを増し、開口部周辺は湖上の靄のような乳白になっています。クリアからほんの僅かずつ青白くなっていく部分は、光を浴びるとオパールセントガラスと同様に薄いアプリコットの遊色に染まります。
この球体のままでも夢の中に出てくる不思議な生命体のようですが、さてここに水を入れて花など活けたらどんな景色になるのでしょう。球体に合わせる花の色は、姿は、ガラスを通して見える茎は果たしてどのような世界を見せてくれるのでしょう。
この神秘的なガラス器は "Early American Pattern Glass" と呼ばれ、1850年頃から1914年頃までアメリカ合衆国で製作されたもののひとつです。ガラスを型に入れて成形する機械は1820年代に考案され、1860年代には大量生産が可能になりました。アメリカには多くの工房が設立され、19世紀後半から20世紀の初めにかけて素敵な色味、デザインのガラス製品が造られたのです。
こちらのお品は1888年から1902年まで製造された "Albany Model" というシリーズのようです。

サイズは球体の直径が約9センチ、高さが約10.5センチです。
古いものですのでスレ傷などがあります。