ガラスの砂時計
ガラスと砂だけの砂時計です。木や金属など余計なものが一切無いため、落ちる砂と素直に向き合うことができてとても清々しい感じさえします。かなり大振りなので、ガラスの美しい造形と存在感も魅力的です。
さて、砂は細かく動く糸のように気持ちよく落ちています。私は早速この時計の計測にとりかかりました。約1時間が経過したところで、まだ砂は半分も落ちていません。そして、その後、私は計測を断念しました。さらに2時間後、砂時計を見たところ、砂が止まっていたのです。砂が半分ほど落ちたところでほんの僅かに引っかかったようで、触った途端にまた砂は落ち始めました。それらの状況証拠から、まずは2~3時間計と言ったところでしょう。
しかし、皆さん、考えても見てください。砂が落ち切ったとて、アラームすら鳴らないのです。
この砂時計以外に時を知るすべのなかった時代に、どうやってこの時計の最後の砂が落ちる瞬間を目撃できるのでしょうか。これは「延々と落ち続ける砂を眺める時計」だと悟りました。
『しつこい頭痛に悩まされている男が、藁にもすがる思いで魔法医を訪ねました。魔法医の老婆は言いました。「今から鍋を火にかけておく。脇の砂時計の砂が全部落ちたら火から下ろして中のものを飲みなさい。私は遠くの村の患者の所に行くから後は自分でやるのだ。」そう言い残して老婆は出掛けてしまいました。
男は砂時計の砂が落ちるのを眺めて待ちました。
サラサラサラサラサラサラ
魔法医の家の開け放たれた窓越しに、風の音、鳥の囀り、色々な音が聞こえてきます。でも、男の耳にはもう何も入りませんでした。
サラサラサラサラサラサラ
長い長い時が経ち、とうとう最後の砂が落ちました。その瞬間のサラリという音は、男の耳には確かに聞こえたのです。そして、男の頭痛はすっかり治っていました。そもそも、自分がなぜここにいるのか暫く思い出せなかったほどです。
男は重い鍋をかまどから下ろし、大きな木のテーブルにゴトリと置きました。鍋の中身はよい匂いのするスープでした。すると、いつの間にかそこに一枚の紙がありました。
その紙には「おあがり おいしいよ」と書いてありましたとさ。』(ただの作り話)
製作年の詳細ははっきりしませんが、売主からの情報では19世紀、フランス製とのことです。
サイズは、高さが約19センチです。
前述の通り、頻繁にではありませんが、全ての砂が落ち切る間に1回程度砂が詰まる恐れがあります。また古いものですので若干の傷、汚れがあります。