長い髪を垂らし、ブラウスにサロペットの若い女性の胸像です。その服装からも、19世紀から20世紀の初頭くらいでしょうか、その頃のフランスの町や村に居た、特に誰ということもない、ということは誰であってもおかしくない、そんな少女のようです。そろそろ自分の人生を自らの手で切り開き、自らの足で歩み始める年頃にも見えます。
ただ白い素焼きの肌に豊かな陰影を纏う彼女のほんの少しだけ上に向けられた眼差しには何が写っているのでしょう。虚空に幻を見ているようでもあり、まもなく訪れる未来を夢見ているようでもあり、いやしかしその目には微かな憂いがうかがえるようでもあります。特別に夢想家というわけではないのかもしれませんが、ふと、今こことは違う世界に心が誘われる、その一瞬を捉えたとても素敵な表情の胸像です。
彼女の心のうちはうかがいしれません。でも、誰でもないのなら、この像にあなたの夢想を投影してもよいではありませんか。どうぞ、ほんの少しだけ眼差しを上に向けて、時空を超えた束の間の旅をお楽しみください。

20世紀中頃までの陶磁器製で、リモージュのサインがあります。
サイズは、横幅の最大が約13センチ、高さの最大が約16センチです。
古いものですので汚れがあります。