ウミユリの化石のブローチ(中)
鈍いシルバーの枝に星がひとつ。その中央には黒みを増した焦茶の五稜星が置かれています。その深い色合いは永遠に続く暗闇への入り口のようでもあり、よく見ると全ての角に闇の世界への道標のように線が刻まれています。こちらはウミユリの化石で、その過ごしてきた長大な時が生み出すのでしょうか、見る人を別世界へと誘う魅力があります。
台座にはホールマークを打った痕跡がありますので、判読はできませんが素材はシルバーと思われます。細かい装飾を施し、やや黒みを帯びた銀の古色が化石をさらに引き立ててとてもよい雰囲気です。
この五角形の化石を利用した装飾品は「サン・ヴァンサンの星」、英語読みで「セント・ヴィンセントの星」と呼ばれ、19世紀の半ば、フランス南東部ディーニュ・レ・バンで製作されたのが始まりです。当地の、「サン・ヴァンサンの丘」でこの化石を目にした金銀細工師が、その形に魅かれて星型のシルバーに嵌め込み「サン・ヴァンサンの星」と名付けたのです。
遥か昔に空の星が丘に降ったかのような五稜星で、偶然でしょうが、17世紀、この丘に天体観測に来た人がこの化石について記した記述が残っているそうです。そして実際は、やはり遥か昔から今に伝わる生命の忘れ形見なのです。どうぞ身に付けて、これからの時間をご一緒に紡いでみてはいかがでしょうか。
こちらの化石がサン・ヴァンサンの丘で出土したという証明書はありませんが、19世紀後半のフランス製です。
サイズは、星の直径が約1.9センチ、枝を含めた全体が約3.5センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。
こちらの商品は店頭展示品のため、売り切れの場合がございます。また、古いもの性質上、汚れや傷もございます。どうぞご理解下さいませ。