金色のクロスに凝った意匠のモノグラムが彫り込まれています。金属の地は金よりも少し赤みを帯びており、金に混ぜ物をして色味を整えたローズゴールドをメッキしたものと思われます。そのやや暗い色調が光の反射を抑えるせいか、モノグラムに不思議な立体感があるようです。前面に浮かび上がるのは大文字の"H"、その背後にあるのは同じく大文字の"A"でしょうか。
ゴシックな雰囲気のクロスにこの文字を彫ったのはどのような人物だったのでしょう。なぜこのブローチを作り、なぜ身につけたのでしょう。それは追憶、記念、それとも顕示のためだったのでしょうか。時空を超えた想像の旅に出かけられるのは、このような古いものを手にした人だけに与えられる特権です。

19世紀の終わり、ヴィクトリア朝末のイギリス製で、サイズは約2.5×2.5センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。