ポール・プライの青い印章
傘を小脇に抱えて小腰を屈めたおじさんが印章に彫られていますが、この人が今回の主役ポール・プライその人であります。以前、一度だけ別の印章でご紹介しましたが、再びお邪魔いたします。
この人は奇天烈な格好をしてそこいらをうろつき、仕事はしない怠け者で、そのくせ人の話にはやたらと首を突っ込みたがるお節介焼き。今日も覗き見、盗み聞きに余念がなく、そのための小道具として傘を持ち歩いているのです。
劇作家ジョン・プール作の3幕物喜劇の主人公で、1825年9月13日、ロンドン、ヘイマーケットシアターで初演され、その後、1870年代まで長らく人気を博しました。このおじさん、厄介なお邪魔虫なのですが、最後は、もっと悪い犯罪者を有罪にする証拠書類を井戸の中から救い出すというお手柄で一躍ヒーローになるという筋書きです。よかったねポール・プライ!
今回ご紹介する印章に彫られた彼の勇姿は、最も有名なポール・プライ役者と言われ、1825年から1837年までその役を演じた俳優ジョン・リストンのものです。
プライの上に彫られたモットーは "HOPE I DO'T INTRUDE" で、直訳すれば「私は(あなたの)お邪魔をすることを望みません。お邪魔じゃないですよね。」となるのですが、日本式に言えば「はいお邪魔様!」という感じでしょうか。特にジョン・リストン演じる姿は、多くの人々の、と言ってももう誰もこの世にはいませんが、心に残る「お邪魔様!」だった事でしょう。
アズールブルーの美しいガラスに彫られ、持ち手は金メッキで、植物モチーフの浮き彫りが古色を帯びて陰影を深め、古きよき時代をしのばせる質感です。
19世紀中頃、ヴィクトリア朝のイギリス製。
サイズは、印章面が約1×1.3センチ、持ち手の高さが約2.3センチです。
古いものですので傷、汚れがあります。