透明感のあるスモーキークォーツの印章です。透き通ったダークブラウンの石が光を含み、また時には煌めきを宿し、落ち着いた佇まいの中にもどこか水底を覗くような神秘的な雰囲気が漂います。そこにちょっと中世を思わせる装飾的なフラクトゥール（ひげ文字）で "J S" と彫られています。
こちらの煙水晶はスコットランドの高地ケアンゴームズで産出されたもので、"cairngorm"「ケアンゴーム」は辞書を引くと「煙水晶」を意味する普通名詞にもなっています。
持ち手は比較的大振りでどっしりとしており、メッキと思われますがかなり白味を帯びた金色です。やや古色を帯びて1ランク彩度を落とした輝きは未だ滑らかな艶をまとい、植物をモチーフにしたうねる装飾は陰影を増し、一部表面が禿げて中の真鍮がのぞいた箇所など、全てが長い時間の流れの中で生まれた景色と言えます。

1890年頃、ヴィクトリア朝も末期に差し掛かった頃のイギリス製。
サイズは印章面が約2×1.5センチ、持ち手の高さが約3センチで、チェーンは現行品で長さが約43センチです。
印章の石については買い付け時の情報により、その後、正式な鑑定は行っておりません。
印章面の片側がやや持ち手の内部に入り込む形で若干傾いておりますが、グラグラと動くような様子はありません。また、古いものですので傷、汚れがあります。