薄いすみれ色の中央に水色の円、そして白い粒が3つ。瞳のような、どこか神秘的な、ちょっと魔術的な、いやいやアトミックなレトロフューチャーと言うべきか、いっそ秘密結社のバッジでは、などとどう形容してよいか迷ってしまうブローチです。生命の力を感じさせながら幾何学的な人工物に仕立てられたアール・デコのお品でしょう。シルバーの台座にエナメルで彩色を施し、ユニークで不思議な意匠に仕上げられています。
ケースはスコットランド、グラスゴーの時計職人で銀細工師でもあった"James Ballantyne & Son"のもので、このブローチを買い付けた時にすでに付いていたものです。こういうケースは通常、かなり傷んでしまうものなのですが、こちらは滑らかなエンジの外張りも、クリームと紺の内張も時代の割には大変よい状態です。それに、何よりも雰囲気、大きさともにこのブローチにピタリと合っているのです。そのようなことからオリジナルのケースかもしれません。

ブローチ、ケースともに1920年代のもので、サイズはブローチが約4.5×1.5センチです。
ひし形のすみれ色の部分のエナメルに何箇所か欠けがあり、それ以外にもブローチ、ケースともに傷、汚れがあります。